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薬草園歳時記(30)再び静岡の七草について 2024年2月


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 2022年1月、七草について書いた(薬草園歳時記(13)七草 2022年1月)。まず、その時の内容を少し引用する。

「私が七草粥のために静岡の生活協同組合ユーコープ城北店で購入した七草の中の蘿蔔(大根)には、たいへん残念なことに葉が付いていなかった。大根の葉には豊富な栄養があり、俳句の講義の時にも、この「大根の葉」を兼題にして詠むことをすすめている。」
「一方、大根の葉はβ-カロテンを含む緑黄色野菜である。ビタミンCやE、カリウム、カルシウム、鉄などのミネラル類、葉酸、ビタミンEなどが含まれ、とくにカルシウムの含有量は、野菜の中でも上位である。この葉を刻んで雑魚と一緒に炒めてふりかけなどにして利用する。」
「例えば、100gあたり含まれるカリウムの量を七訂日本食品標準成分表で比べると、大根の根の部分(皮付きの生)では230mg、大根の葉の部分では400mg、切り干し大根の乾物では、3500mgである。同じく鉄分を比べると、それぞれ、0.2mg、3.1mg、3.1mgであり、ビタミンCでは、それぞれ、12mg、53mg、28mgである。」

 というように大根の葉にはとても重要な栄養があって、それをビタミン不足になりがちの真冬にいただくのが七草の重要な意味である。したがって「すずしろ」に葉がついていないというのが気になっている。それはあえて栄養素を排除しているというだけでなく、日本に貴重な伝統の意味を伝える点でも残念なことになるし、大根の葉を食べるという日本人の知恵を伝える点でも欠陥を持っていることになる。あえて大げさに言うと、この七草で静岡の文化が重要な影響を受けているという言い方もできるかもしれない。

収穫前の青首大根(撮影 2024年1月25日 職員の自家菜園)

 大根(ダイコン)(学名:Raphanus sativus L.)は根菜類の代表として、煮物や漬物、汁の具など幅広く料理に使われる。英名はJapanese Radishであるが、原産地は地中海沿岸などで、日本には中国、朝鮮半島など東アジアから渡ったとされる。日本に来てから品種改良が各地で進んだ。秋から冬に収穫する秋どり以外に、春どり、夏どりがあり、季節に応じて栽培が可能となった。また、根の上部が緑色になる青首系は漬物やサラダに、根の上部が白い白首系は主に煮物などに向き、蕎麦などの薬味用に辛味の強い品種などもある。根にはビタミンC、カリウム、消化を助け胃腸を整えるジアスターゼが含まれる。

薬草園のブロッコリー(圃場で学生が管理する区画にて撮影)

 ダイコンやブロッコリーなどのアブラナ科の植物にはイソチアネートいう化合物が含まれる。辛味の元となる成分であり、切ったり加熱すると生成される。硫黄を含む物質であり、ブロッコリーの茹で汁が匂うのはこれである。分解すると揮発性成分が発生し、濃度が高くなると異臭を感じる。しかし、イソチアネートには肝臓の解毒作用の活性化、発がん性物質を抑制する効果がある。

 ダイコンの可食部は根と葉だが、薬用では種子を使う。民間療法で食中毒の腹痛に、粉にした種子または少量の種子をかみ砕いて飲む。生薬名は萊菔子(ライフクシ)で、ダイコンと同じくアブラナ科のカブ(学名:Brasissica rapa L.)も種子を薬用することがあり、薬効はしもやけ、そばかすに良いとされる。

薬草園のキャベツ(今年度、苗の寄付をいただいたので導入した)

 畑でダイコンやカブは収穫されず放置するといずれ薹(とう)が立ち、先端に4弁の十字形花をつける。ダイコンは白色または薄紫色で、カブは黄色の花なので見分けることができる。アブラナ科は交雑し易いことで知られているが、姿が似ているダイコンとカブが交雑することはない。しかし、アブラナ属(Brasissica)のカブ、ハクサイ、ミズナなどのカブグループ内、キャベツ、ブロッコリー、ケールなどのアブラナ属(Brasissica)のキャベツグループ内では交雑する。各グループは同属であるが、カブグループとキャベツグループ間では交雑しない。そのためキャベツとカブが交雑することはないのである。
 七草のすずしろ(だいこん)、すずな(かぶ)は身近な食材だ。せりはスーパーマーケットや八百屋に売っていて、多年草で野生では低湿地、水田に生えていることがよくあり、薬草園にも植えてある。七草粥の食材を自分で調達する際には、ごぎょう、なずな、はこべら、ほとけのざ(こおにたびらこ)の4種の確保が問題となる。これらは野草だが、残念ながら雑草扱いされていていることがあり、毎年時期がくればまた生えているという場所もあるが、見つからない場合もある。また、見つけたとしても、小さな草なので、定量を摘み取るのに苦労する。また、正確に植物を見分ける知識も必要になる。

薬草園のルッコラ(キバナスズシロ)

 「薬草園歳時記(13)七草 2022年1月」の掲載後、「七草粥の食材の確保」についての問い合わせが大学にあった。それから来園者に聞いたところ最近は代用品を使うことがあるという。クレソン、春菊、ルッコラ、ベビーリーフ、白菜などで、特にこだわりがない人は、すずしろ(だいこん)とすずな(かぶ)だけで作って食べる方もいた。また、自家菜園ですずしろ(だいこん)とすずな(かぶ)を栽培する方はやはり葉と根の両方とも粥に加えるという。クレソンには消化促進作用があり、春菊に含まれるβ-カロテンには風邪予防の効果がある。確かにどれもスーパーマーケットにあり現代風に自分の好みでアレンジして食べるのも良い。

 前回のブログを書いた後、そのコピーを「生活協同組合ユーコープ」の理事長に送ってみた。「食とくらしの安心をめざして、神奈川?静岡?山梨3県でお店とおうちCO-OP(宅配)などのサービスを展開する生協です。人と人をつなぎ、環境?社会貢献?福祉?平和..」とあるので、静岡県民の暮らしにも影響する大根の葉のことを知ってほしいと思ったからである。しばらくして丁寧に返事をいただいたが、生産者の関係で大根の葉をつけることができないという説明だけで終わっていた。

 しつこいと思われるかもしれないが、やはり気になっているので、今年はユーコープではなく、「しずてつストア」で七草を購入してみた。結果ははやり2022年のものと同じ内容で、大根の葉は付いていなかった。その商品の写真を載せておく。そこで今度は生産者にこのブログをコピーして送ることにした。どのような答えが返ってくるか、少し期待している。

しずてつストアで買った七草。すずしろに葉が付いていない。

買った七草の説明書には、すずしろに立派な葉が付いている。

 買った七草の説明書には、「古く中国より伝わり、春の七草を使って作る粥は、1年の無病息災?招福を祈願する風習として、???野菜の乏しい冬場に不足しがちな栄養素を補う役割とされています。」とある。『生産者高木伸行』と署名入りの説明である。また、「箱根西麓は三島野菜の特徴として、この地では古くから大根や馬鈴薯などの露地野菜が栽培されている」とあり、「赤土で水はけがよい土の特徴が紹介されている。甘くて美味しい野菜が育つ」という、その大根の葉をぜひ私は食べてみたいと思う。

 検索して調べると生産者の紹介記事もいくつか出ている。例えば、「DOMOnet」の記事では、「七草粥は日本に残された食文化のひとつ。『七草は食べるものではあるけれど、お母さんたちが想いで購入されているものだと思っています。七草粥を家族で食べる風習を守っていきたい』と高木さん。ここ数年は市内小中学校にも提供するなどして伝統の継承にも一役かっています。『子供達や若い人に少しでも知ってもらい、大人になって自分の子供に伝えて欲しい』と内藤さん。」という記事が出ている。それならばなおさら大根の葉を食べるように出荷してほしい。それによって「伝統の継承に一役」買うことができる。

 上の説明には「古く中国より伝わり」とあるが、実は、古代から日本では年初に雪の間から芽を出した草を摘む「若菜摘み」という風習があった。これが七草粥の行事の原点とされている。古代の「七草」の記録は、さまざまであり、違いが大きい。『延喜式』には餅がゆ(望がゆ)という名称で「七種粥」が登場する。これによると粥に入れていたのは米、粟、黍、稗、みの、胡麻、小豆の7種の穀物である。これとは別に一般官人には、米に小豆を入れただけの「御粥」が振る舞われた。餅がゆは毎年1月15日に行われ、邪気を払えると考えられていた。この内容は『土佐日記』や『枕草子』にも登場している。

 やがて旧暦の正月に採れる野菜を粥に入れるようになった。その種類は諸説あり、地方によっても異なる。現在の七種は、『河海抄』(四辻善成による『源氏物語』の注釈書、1362年頃)の「芹、なづな、御行、はくべら、仏座、すずな、すずしろ、これぞ七種」が初見とされている(作者は不詳)。水田の雑草または畑に出現するものばかりであって、この七種の定義は、日本の米作文化が遠因となっていると考えられている。七種粥は、江戸時代には武家や庶民にも定着した。幕府では公式行事として、将軍以下全ての武士が七種粥を食べる儀礼を行った。

 中国の六朝時代の『荊楚歳時記』には、人を殺さない日である「人日」(旧暦1月7日)に「七種菜羹(しちしゅのさいこう)」という7種類の野菜を入れた羹(あつもの汁)を食べて無病を祈る習慣が記載されている。また、『四季物語』には「七種のみくさ集むること人日菜羹を和すれば一歳の病患を逃るると申ためし古き文に侍るとかや」とある。この考えも日本には伝わっていたと考えられる。

我が家の今年の七草粥。豆などを付け合わせに。

 改めてであるが、生の大根の葉には、β-カロテンやビタミンK、葉酸を豊富に含んでいる。茹でると水溶性のカリウムや葉酸、ビタミンCが減る一方で、β-カロテンとビタミンKは増える。茹でることで含まれる水分量が減ったためと考えられる。例えば、大根の葉を使ったふりかけを作るといい。β-カロテンやビタミンKなどの脂溶性ビタミンは茹でても減らない上、油で炒めることで吸収率が良くなる。大根の葉を炒めて作るふりかけは、手軽にできて栄養も摂ることができる逸品である。静岡であれば、しらすや胡麻、鰹節などと一緒に炒めると美味しいふりかけができる。
 ちなみにインターネット上で「七草」「七種」「すずしろ」などの検索で写真を集めてみたが、ほとんどの場合、葉付きの大根という認識であり、中には「すずしろは葉のみを摘みました」というコメントさえ見られた。大根の葉を食べるのが冬場を乗り切る知恵として活きているということができると思う。

尾池和夫


●参考URL
箱根ファーマーズカントリー
新鮮元気な箱根西麓野菜をお届けします!静岡県三島市?函南町を中心に頑張る農家の若手集団
http://hakone-fc.com/free/takagi

DOMEnet「ドモ丸の農家レポート 農家の仕事をもっと知りたい!」
https://domonet.jp/shizuoka/c/ja-nouka/05/

食品栄養データベース 大根?葉?生
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=6_06130_7

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