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薬草園歳時記(26)牧野富太郎とワカキノサクラ 2023年4月


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 現代の日本では春の花と言えば、サクラ類が代表される。一般的に日本人が好きな花木の典型が桜である。桜は単に花の美しさを観賞するだけでなく、精神的、心情的な関わりも持ち続けている。サクラ類が日本を代表する花として知られるようになったのは美しい自生品種が多いこと、サクラの園芸品種のほとんどが日本産であるからである。ソメイヨシノ(染井吉野)の開花が春を告げる合図となっていて、サクラ前線の便りが、各地の開花状況を報じる。

 NHKの連続テレビ小説第108作『らんまん』 のモデルは、日本の植物学の父と言われている牧野富太郎(まきの?とみたろう、1862―1957)がモデルである。ひたすらに草花と向き合い続けた植物学者の物語がフィクションとして描かれる。物語のスタートは高知県の佐川町である。

 牧野富太郎は1862年(文久2年)、土佐国佐川村に生まれた。現在の高知県高岡郡佐川町である。彼の研究成果は約50万点の標本や観察記録にあり、『牧野日本植物図鑑』などの多数の著作として残っている。小学校中退で理学博士の学位も得た。誕生日の4月24日は「植物学の日」に制定されている。日本全国で植物標本を作製し、個人所蔵の分だけで40万枚に及ぶ。命名した植物は1,500種類を数える。野生植物だけでなく、野菜や花卉なども含まれ、身近にある植物すべてが研究対象となっていた。

 上村登著『花と恋して 牧野富太郎伝』によると、「桜は牧野博士の大好きな花の一つである。ことに絢爛豪華なソメイヨシノを愛した」とある。「博士が東京へ出て間もないころ、東京でソメイヨシノを初めて見、そのころはまだ故郷には一本もなかったその苗木を買い郷里へ送って植えさせた」とあるから、1902(明治35)年頃の日本の桜事情がわかる。

ワカキノサクラ(上村登による)

 牧野富太郎が故郷の佐川町で栽培されていた植物に命名した「ワカキノサクラ」は、漢字では「稚木の桜」と書く。種を蒔いてから3年という短期間で花が咲くという由来である。比較的矮性種のために盆栽に仕立てられることが多い。バラ科の落葉樹で、ヤマザクラの仲間である。樹高は2~4m程度、樹皮は縦に裂ける性質を見せる。佐川町ではこの「稚木の桜、ワカキノサクラ苗木1鉢」をふるさと納税の対象としており、10,000円以上の寄付で送ってもらえる。
 2008(平成20)年11月15日、アメリカ合衆国のNASAからスペースシャトルエンデバー号で若田光一さんと一緒に、いくつかの桜が宇宙の旅をした。宇宙ステーションに持ち込まれて約8ヵ月半旅をした桜は「宇宙桜」と呼ばれているが、その中に「ワカキノサクラ」がある。宇宙に行ったワカキノサクラは、尾川小中学校の小学生が種を取り、有人宇宙システム株式会社を通してNASAに送られ、2009(平成21)年7月31日に無事に帰ってきた。その年の9 月に帰ってきた種から、2010(平成22)年に8本が発芽し、2011(平成23)年に花が咲いた。一緒に宇宙に行った桜の中では、一番早く花が咲いた。この8本のうち7本は色々な所に送られ、尾川小中学校に1 本だけ残っている。宇宙桜1世は1本から種をとって発芽させた2世が大きくなり、その2世から種をとり発芽させた3世を生徒たちが育てている。

 高知市にある牧野植物園でも牧野富太郎生誕150周年を記念して宇宙桜が植樹された。2012年4月24日、先着150名に牧野富太郎生誕150周年を記念の特殊切手と大判ハガキセットがプレゼントされた。尾崎正直知事(当時)が挨拶し、仁淀川町の大石町長が宇宙桜の苗木を説明した。仁淀川町にある樹齢500年のヒョウタンザクラ(重要文化財指定)の種を地元の小学校の子ども達が採取して、宇宙を旅してきた種から発芽した「宇宙桜」のヒョウタンザクラ(エドヒガン)の苗木である。続いて佐川町の西森副町長が「ワカキノサクラ」の「宇宙桜」の苗木を説明した。全国14箇所の「宇宙桜」が誕生した中、高知県から2つの「宇宙桜」が出た。

 静岡県立大学の薬草園にもソメイヨシノ(染井吉野)が咲く。ソメイヨシノは母をエドヒガン、父を日本固有種のオオシマザクラの雑種とする自然交雑もしくは人為的な交配で生まれた日本産の栽培品種のサクラである。1995年にソメイヨシノはエドヒガンとオオシマザクラの雑種が交雑してできた単一の樹を始源とする、栽培品種のクローンであることが、遺伝子研究の結果、明らかになっている。

薬草園付近のソメイヨシノの花(2023-3-24撮影)

 日本では、サクラは固有種を含んだ10もしくは11の基本の野生種を基に、変種を合わせて100種以上の自生種がある。さらに改良開発されてきた栽培品種が少なくとも200種以上あるという。分類の仕方によっては、600種以上、または800種とも言われる。サクラ類の園芸品種は簡易的に「性」で分けられ、「山桜性」「大山桜性」「里桜性」「彼岸桜性」と4つに区別する。 梅や桜などは交雑し易く、遺伝子レベルで分類すると膨大な数になるので「群」や「性」のグループで分ける。植物学の観点からは「性」という表記はないが、園芸文化史の中では一般的である。

 なかでも諸外国でも好まれるのはサトザクラ(里桜)でソメイヨシノがその代表的な品種である。一般的に、オオシマザクラの系統をサトザクラ(里桜)と総称している。

 これら多くのサクラ類のうちソメイヨシノは、江戸時代後期に開発され、昭和の高度経済成長期にかけて日本全国で圧倒的に多く植栽され、海外まで広く渡り各地で植栽されている。気象庁が沖縄県以東、札幌以西の各地のソメイヨシノの開花と満開を判断する「標本木」としている。

 ソメイヨシノ葉エキス(サクラ葉抽出液?サクラ葉エキス)は、ソメイヨシノの葉から得られたエキスで、サクラ葉抽出液とも呼ばれる。紫外線などによる肌へのストレスをリセットさせてくれる。期待される効果には、抗アレルギー、抗酸化、美白、保湿、かゆみ抑制がある。

 これらの葉抽出液の香り成分は桜餅の葉と共通する芳香性のクマリンという成分である。塩漬けし、加工された桜餅の葉には香りと甘さを加える効果がある。生の葉には芳香性はないが、葉は加水分解をするとクマリンを遊離するからである。クマリンの芳香性にリラックス効果があり、葉に含まれる青酸配糖体には喘息症状の緩和、二日酔い防止、抗菌作用などの効果が期待できる。

 静岡県立美術館にはウコンサクラ(鬱金桜)がある。ウコンサクラは、バラ科サクラ属の植物で、オオシマザクラを基に生まれた日本原産の園芸品種で、サトザクラ群のサクラ類である。別名は「浅黄桜」である。ウコンという名は、ショウガ科のウコンの根を染料に用いた鬱金色に由来する。江戸時代以前からある園芸品種で、荒川堤で栽培されていたオオシマザクラの系統の1つである。黄色、黄緑、緑色系の花を咲かせる。花弁に黄色のカロテノイドと緑色のクロロフィルを含む葉緑体を持っている。

県立美術館のウコンサクラ(鬱金桜)の花(左)とギョイコウ(御衣黄)の花(右)

 ギョイコウ(御衣黄)は、ウコンサクラと同じく、バラ科サクラ属の植物で、オオシマザクラを基に生まれた日本原産の栽培品種のサトザクラ群のサクラである。名前は江戸時代中期から見られ、名の由来は貴族の衣服の萌黄色に近いためで、別名は「ミソギ(御祓)」である。花弁に黄色のカロテノイドと緑色のクロロフィルを含む葉緑体をもつ性質はウコンなどと同じで、ウコンは緑色のクロロフィルが少量のため黄緑(淡黄色)に見え、ギョイコウはクロロフィルが多量のためより濃い緑色に見える。

薬草園のヤマザクラの花(2023-3-24撮影)(左)とヤマザクラの名札(右)

 ヤマザクラ(山桜)はバラ科サクラ属の植物で、本州(宮城、新潟より南西)、四国、九州の山地に自生している。開花と葉芽の発生が同時で、花と新芽の若葉の色変わりで、樹上が非常に特徴的な色合いになる。樹皮は暗紫褐色で光沢がある。夏に樹皮を剥いで日干しにしたものが生薬のオウヒ(桜皮)になる。漢方では排膿、解毒などの効能が利用される。湿疹や蕁麻疹などにも用いられる。古くから日本の民間療法として蕁麻疹、腫れ物などの皮膚病、解熱、咳止めなどに利用されてきた歴史がある。ソメイヨシノ、オオシマザクラ、エドヒガンの樹皮にも同様の効果があるとされる。

 また、サクラの花には「糖化」を予防する効果がある。「糖化」とは体内で余った糖分が、体内のたんぱく質について劣化させることをいう。特に「糖化」されやすいのがコラーゲンで、コラーゲンが糖化により劣化すると老化現象が現れる。サクラの花以外でも、ドクダミ、ブドウ葉、カモミール、セイヨウサンザシなどにも「糖化」を防止する強い効果がある。

県立大学のオオシマザクラの花(2023-3-24撮影)

 オオシマザクラ(大島桜)はバラ科サクラ属の植物で、伊豆七島、伊豆半島、房総半島などの本州の暖地に分布する。伊豆七島の大島に自生があったことからその名が付いた。自生地では古くから防風林として植えられ、潮害や煙害に強いため都市部の公園や街路樹に植栽されることがある。

 桜餅を包む皮には塩漬けしたオオシマザクラの葉を用いる。桜餅は江戸時代、江戸の長命寺の寺男が隅田川堤の桜の落葉を塩漬けにして餅を包んで売ったのが始まりと言われる。伊豆半島では、明治末期、南伊豆の子浦地区で桜葉漬けが始まり、自生のオオシマザクラを使った薪炭生産が盛んな松崎に中心が移った。そのためオオシマザクラをモチザクラ(餅桜)、タキギザクラ(薪桜)ともよぶ。21世紀初頭で200戸ほどの農家がオオシマザクラを栽培し、松崎町は全国の約7割の生産量を誇り、桜葉生産が日本一となっている。2001年には環境省の「かおり風景100選」に「松崎町の桜葉の塩漬け」が選ばれた。桜葉の採取は毎年1月下旬~2月上旬にかけて行われる。1年前に伸びた枝を根本より20cm程残し全て剪定し、そこから伸びた枝の葉を5月上旬~8月下旬まで、手で1枚1枚丁寧に摘み取る。

桜味堂の「桜葉もち」

 松崎町には有名な3つの和菓子店の桜餅がある。「桜葉餠」という。桜味堂と永楽堂の桜葉餅は粒餡、梅月園の桜葉餅は漉し餡である。

 桜餅には、大きく分けて2種類「長命寺(ちょうめいじ)」と「道明寺(どうみょうじ)」がある。長命寺の発祥は関東で、クレープ状の生地であんこを包んだものである。約300年前「長命寺 桜もち 山本や」初代が、桜餅を考案した。向島の名跡、長命寺の門前で、売りはじめたことに由来する。道明寺の発祥は関西で、「道明寺粉」で作られていることから、そう呼ばれる。道明寺粉は、糯米を蒸した後乾燥させた保存食で「糒(ほしい)」を粗挽きした粉で作る。株式会社ウェザーニュースがこれらの分布を調査した結果が、地図にまとめられている。
櫻餅闇のかなたの河明り   石田波郷
また母の昔話や桜餅       和夫

 今回も、薬草園の山本羊一氏に多くの貴重な助言をいただいて加筆修正した。また、大学とその周辺の今年の桜を撮影して写真を提供していただいた。

尾池和夫


●参考文献
『尾川小学校開校百周年記念誌』(発行:開校百年記念誌編集委員会)
『佐川子ども風土記』(発行:佐川町人権教育研究協議会)
『花伝説?宙へ!宇宙を旅した桜たち』(発行:武田ランダムハウスジャパン/著者:長谷川洋一)
『牧野富太郎伝 花と恋して』(上村登、高知新聞総合印刷、2022年)

●参考URL
養命酒ライフスタイルマガジン「元気通信」より
https://www.yomeishu.co.jp/genkigenki/crudem/130327/index.html

株式会社ウェザーニュースの桜餅マップ
https://weathernews.auone.jp/au/sakura/sakuramochi_topic.html

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